HBS卒業&ボストンでスタートアップに就職

前回の投稿からかなり時間が経ってしまいました。これが最後のブログ投稿になります!


この度、ハーバードビジネススクールを卒業しました!
そして、ボストンでヘルスケア系のスタートアップ企業に就職しました!

1. HBS卒業


5月27日にハーバードビジネススクールを卒業しました。
心から尊敬できるクラスメートと共に過ごした2年間は、正に最高の時間でした。

これまで驚くような成果を残してきた仲間から刺激を受け、授業中の鋭い発言から新たな視点を学び、ソーシャルイベントなどを通じて親睦を深めたり、人生について語り合いました。
HBSのミッションは「We educate leaders who make a difference in the world」ですが、HBSで出会った仲間は皆  志が高く、圧倒的な熱量を持っていて、常に驚かされました。

卒業後は皆、それぞれの国や都市に散らばってしまいましたが、非常に濃密な2年間で深い関係が築けたので、今後も連絡を取り合っていければと思います。



卒業後はコンサルティング、金融、テック等の大手企業に就職した友人もいれば、スタートアップ非営利団体で働き始めたり、医師として病院で働いたり、自分でビジネスを立ち上げようとして奮闘している友人もいます。
起業の分野も、健康食品ビジネスinアフリカ化粧品ビジネスin中国ファッションビジネスinニューヨークB2Bサービスinボストン  等、多種多様です。


2年間を共に過ごした仲間が、それぞれの地域や領域で今後どのようなことを成し遂げるかを見るのが楽しみです!





2. Health Techスタートアップに就職

現在の会社について
7月からボストンにある、ヘルスケア系スタートアップ企業で働き始めました!
ついこの間、$30MのSeries Aの資金調達をしたばかりで、社員もまだ30人くらいの小さな会社です。
内視鏡にAI / マシンラーニングを組み合わせて、消化器専門医の診断をサポートするソフトウェアを開発しています。

開発中の商品はいくつかあるのですが、直近で商用化を目指していているものは、大腸検査の際にポリープをリアルタイムに発見して、消化器専門医の診断をサポートするソフトウェアです。


ポリープはそのまま放置しておくと、大腸がんになってしまうリスクがあります。
米国では毎年 5 万人以上が大腸がんで亡くなっていて、がんの死因第2位となっているのですが、実は内視鏡検査の際に約25%のポリープが見落とされているというデータがあります。

そのような医療ミスを減らし、一人でも多くの命を救うために、今後このソフトフェアが広く活用されることを目指しています。


このプロダクトの商用化が直近の大きなゴールですが、それを見据えて考えなければいけないことを全般的に担当しています。
・どのような時間軸や戦略で規制当局と話し合いを進めていくべきか?
・営業をかけるべき病院はどこか?
・商品のvalue proposition / 訴求価値は、どのようなメッセージで伝えるべきか?
・どのようなマーケティング資料を準備すべきか?
・適正な価格はどの程度か?
・どのKey Opinion Leaderを巻き込んで、どの学会でどのような発表をすべきか?



コンサルティングで働いていた頃のスキルがかなり活きていて、働き始めてまだ1か月しか経っていませんが、やれることは山ほどありそうです!



上記のプロダクト以外にも、安倍前首相も患っている潰瘍性大腸炎や、クローン病などの領域でもAIを取り入れた診断サポートツールを開発しており、それらの事業の戦略策定にも関わっています。
この疾患領域では、イーライリリーJohnson & Johnsonなどの大手製薬会社とも既にパートナーシップを結んでいます。


一般的にスタートアップの聖地と言えばシリコンバレーですが、ヘルスケア領域ではボストンが特に有名です。
ハーバードやMITなどで学位を取った優秀なサイエンティストが数多くボストンの製薬会社、医療機器メーカー、病院、Health Tech企業等で働いています。
そのような場所でヘルスケア関係の仕事ができることは、とても刺激的でやりがいがあります。

コロナ以降、これまでに無い程多くの資金がヘルスケア / ライフサイエンスに流れてきていて、正に黎明期を迎えているとも言えるヘルスケア×テクノロジーの領域で働けることにワクワクしています!

また内視鏡は、オリンパスやFujifilm等の日本企業が圧倒的なシェアを握っている業界なので、将来は何かしらの形で日本とアメリカの懸け橋としての役割を担っていきたいです。



何故、AI×診断の領域なのか
もともと大学では数学と経済を専攻していたため、ヘルスケアには特に関心はありませんでした。
しかし、コンサルティング業務を通じて大手製薬会社や医療機器メーカーをご支援する中で、「人々の生活の質や健康を改善する」ことに非常に意義を感じるようになりました。


ある大手製薬会社のプロジェクトでは、会長、社長、執行役員など、トップマネジメントと議論をしながら10年先を見据えたデジタル戦略の策定を支援しました。
その中で、テクノロジーを取り入れることで更に医療の質を高められる可能性に心を動かされました。




また数年前には家族が誤診に苦しんだ、非常に辛い経験があったことも、大きな転換点でした。

診察して下さる医師が熟練で丁寧な方であれば安心できますが、一方で「経験が浅い」「長時間勤務で疲れている」「家庭内トラブルに気を取られている」などの状態の医師にたまたま当たってしまうと、それだけで正確な診断が下されないリスクが高まってしまうこともあります。

家族が苦しんだ誤診を目の当たりにし、「テクノロジーを活用することで、医療現場における人為ミスを減らす」必要性を強く感じるようになりました。




アメリカでの就活の実情
このような背景もあり今の会社に就職をすることになったのですが、内定に辿り着くまでの道のりは非常に長かったです。
就職先が決まるまで、数多くの企業に履歴書を送ったりしましたが、ことごとくdeclineされ続けました。

正確な数字は分からないですが、軽く100回以上の「No」を突き付けられたかと思います。

(100以上の会社に応募した訳ではないですが、1社あたり複数のポジションに応募したものをカウントすると、内定に結びつかなかった経験は100回以上繰り返されました。)



それでも根気強く、紹介に紹介を重ねて数多くの方とお話をさせて頂く中で、機会を探り続けました。
先の見えないプロセスで大変ではありましたが、チャンスはふとした瞬間に巡ってきました。

就活で苦労をしていた今年の4月頃に、あるソーシャルイベントで自分のクラスメイトに「AI×診断の領域に興味がある」と話したところ、
「それだったら、xxxに話すと良いよ!正にその領域でビジネスをやっているから。」
と言われて紹介されたのが今の会社のCEOでした!


その後、様々な部署の方と計7回の面接を重ね、HBS卒業式の翌日にやっとオファーを頂きました



HBSに来る前は、「ハーバードの知名度があれば、アメリカでの就活も何とかなるだろう…」と思っていましたが、実態は遥かに厳しかったです。



特に①アメリカ国籍や永住権を持っていない人は就労ビザが必要になる、ということと、②アメリカの採用基準が高い、ということが大きなハードルになりました。

①就労ビザ
よく考えれば当然のことではありますが、全く同じスキルを持った2人がいて、片方はアメリカ国籍を持っていて、もう片方は外国人で就労ビザを支援しなければいけない、となれば、通常はアメリカ人が採用されます。
就労ビザの支援は、手続きに時間や金銭的な負担を要する上に、ビザを申請したところで承認されるかが不透明だからです。
要職を任せて数年後にアメリカを去る可能性がある人よりも、確実にアメリカで働き続けられる人を優先して採用するというのは、至極当然かと思います。

従って、大企業を含め、多くの会社は「就労ビザのスポンサーが必要なのであれば、採用はしない」というスタンスです。

募集要項に「Permanent work authorizationを有している」ことが必須となっていたり、インタビュー調整のメールで「ちなみに就労ビザのスポンサーは必要?」と採用担当者から聞かれ、「必要」と返答すると音沙汰が無くなる、ということも多々ありました。


②採用基準
アメリカの大都市では、Advanced degree (学士号より上の学位)を持っている人材層が非常に厚いです。

MBAはもとより、MD (医学士)MPH(公衆衛生学修士)JD(法務博士)STEM領域の修士号、博士号などの学位を持った人がゴロゴロいます。

その中で「数学と経済の学士号」しかない僕としては、なかなか厳しい戦いでした。
ヘルスケアは特にAdvanced degreeの取得者が多い領域でもあるので、自分のスキルセットを買ってもらうことは簡単ではありませんでした。

もちろん「学位が全て」では無いですが、アメリカは日本以上に学歴社会です。

学位がなかったとしても、前職が製薬会社や医療機器メーカーであれば、就活も進めやすかったのかもしれないですが、「コンサルティングでヘルスケア関係のプロジェクトをしていた」程度のバックグラウンドでは、あまり強いセールスポイントにはなりませんでした。




一般的に転職をする際は、「インダストリー」、「国・地域」、「部門・職種」の中で、複数項目を同時に変えることは難しいと言われています。

僕の場合は、
インダストリー:コンサルティング → ヘルスケア
国・地域:日本 → アメリカ
部門・職種:戦略立案 → 戦略の立案&実行/オペレーション
と、3つを一気に変更しようとしていたことも、就活を難しくさせた一因です。




就活からの学び
アメリカでの就活は苦労しましたが、とても良い経験になったとも思っています。
今回の経験からの学びを3つ書き留めて、このブログを終えたいと思います。


1. Don't ever let someone tell you, you can't do something.
(Clicheに聞こえてしまうかもしれませんが)周りの声に惑わされず、自分の夢や思いに正直であること。そして、何回 Noを突き付けられようが、胸を張って前に進むことの大切さを身をもって学びました。

『The Pursuit of Happyness(幸せのちから)』という映画の一節で、ウィル・スミスが息子に言う以下のセリフが気に入っています。
"Don't ever let someone tell you, you can't do something. Not even me. You got a dream, you gotta protect it. When people can't do something themselves, they're gonna tell you that you can't do it. You want something, go get it. Period."

100を超えるNoは、あたかも「君には無理だよ」と言われているようでしたが、それに屈しなかったからこそ、今 本当にやりがいの感じられる仕事ができています
しかも、(自分で言うのも何ですが)同僚や上司からとても信頼してもらえていると感じており、就活であれだけ苦労したことが嘘かのようです。



2. Your career doesn't have to make sense to others.
MBA卒業後は誰もが憧れるような一流企業で働き始める人も多い中、誰も聞いたことが無い小規模の会社に就職をすることは、周りから「何で…?」と疑問を持たれたかもしれません。

せっかくコンサルティングのようなprofessional firmと呼ばれる業界で働いたのであれば、そのまま経営に直接関われるような仕事を続けたり、より高い給料が期待できるキャリアに進むことが自然なのかもしれません。

ただ、周りの人にとって「make sense (納得いく/つじつまが合う)」しなくても、自分の中で「make sense」していれば良いと思えるようになりました。

あるHBS卒業生の言葉にとても共感しました。
自分のキャリアは他の人に納得してもらうためにあるのではない。自分にとって納得感があるのであれば、どのような理由で今の仕事を選んだかを周りに説明して理解してもらう必要などない。
自分のキャリアを周りに認めてもらいたいという承認欲求が人は少なからずある。でもHBSの同級生を見ていると、周りに流されずに、意志を持ってキャリア選択をした人の方が、卒業して10年経った今でも楽しく仕事をしている



3. If you don't ask for it, you won't get it.
就活中はひたすら「AI×診断の領域に興味がある」ということを言い続けていました。そして、そのような業界の人を知っていたら紹介してほしい、ということも多くの人にお願いをしました。

どのようなことがきっかけで新たなチャンスに繋がるかは分からないので、自分の夢やビジョンを発信し続けることが重要です。
すぐに結果に結びつかなかったとしても、「そういえば彼はxxをやりたいって話していたな。もしかしたら、xxを紹介してみると良いかもしれない」と、ふとした瞬間に思い出してもらえるかが運命を左右することもあります。

礼儀をわきまえることは大事ですが、遠慮しすぎると誰からも気づいてもらえません。
成し遂げたいことがあるのであれば、一貫したメッセージを発信し続けることが、周りからのサポートを得る上で重要だと実感しました。


最後に
さて、HBS卒業卒業後の進路のご報告をもって、このブログは一旦締めくくりたいと思います。
妻はHBSを来年卒業するので、来年5月まではHBSキャンパスに住み続けますし、その後も暫くはボストンに残りたいと考えています。
ブログ読者の方でもしボストンにいらっしゃることがある際は、是非お目にかかれれば幸いです!

今まで2年間に渡り、ブログを読んでくださり、本当にありがとうございました!
今後はHBSでの学びを活かし、社会にポジティブな変化をもたらせるよう邁進して参ります!

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