ハーバードで無印良品ブーム到来

授業が始まって3週間。目まぐるしく毎日が過ぎていき、皆が口を揃えて「やる事が多すぎる…!」「息つく間もない」と話しています。

ただ、どのケースも読み応えがあり面白く、「今日はどんな議論になるんだろう…!」とドキドキしながら日々の授業に臨んでいます。
ここ3週間の授業で取り上げられたケースを少しだけ紹介すると、以下のような内容です。

Financial Reporting & Control (FRC) 会計の授業
- NetflixがDVDレンタル事業から、ビデオストリーミング事業にビジネスモデルを移行した際の会計処理の変化
売上はどのタイミングで計上するか、減価償却はどのように扱うべきか?
- プロバスケットボールリーグ (NBA)の、チームオーナーと選手との間で起きた、給与水準の交渉
オーナーが故意に利益を過少計上して、選手の給料を低く抑えようとしているのではないか?

Technology and Operations Management (TOM) オペレーションの授業
- ユナイテッド航空におけるフライト・スケジュール最適化のアプローチ
拠点空港(ハブ空港)と各都市の空港を放射状(スポーク)に結ぶHub&Spoke方式と、ハブ空港を設けずに各都市を線状(Linear)に結ぶ方式のメリット、デメリットは何か?
-トヨタ自動車の米国ケンタッキー州の工場における「トヨタ生産方式」の取り組み
カイゼン、アンドン、カンバン、ジャスト・イン・タイム、「5回のなぜ」等のトヨタの理念をどのように浸透させ、どのような効果があったか?

Marketing マーケティングの授業
- ED治療薬のシアリス(Cialis)が、バイアグラに対抗するために取ったマーケティング戦略
バイアグラの牙城を崩すために、どの顧客セグメントに対して、どのようなメッセージを打ち出すべきか?
- 米国の電動工具市場でシェア1位のマキタ社から首位の座を奪うために、Black & Decker社が取ったマーケティング戦略
どのような商品名、色使い、宣伝チャネルを活用すれば差別化が図れるか?


3週間で約30個のケースを読んできましたが、その中でも特に盛り上がったのが、マーケティングの授業で扱われた無印良品のケースです!
今年書き上げられた出来立てほやほやのケースで、2019年4月に銀座にオープンしたMUJI Hotelについても言及されています。
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日本人にとっては馴染み深い無印良品。皆さん、どんなイメージを持っているでしょうか。
シンプルで機能性を重視したデザイン、木を基調としたナチュラルな素材、お手頃な価格、落ち着いた色使い、等でしょうか。

この無印らしさ(MUJI-ness)が日本人以外にはなかなか理解しづらいらしく、授業中議論がかなりヒートアップしました。
「MUJI-nessって何なんだよ! 全く訳がわからん」という感じです笑

それもそのはずです。無印良品は、敢えて「無印らしさ」を明確に定義していないのです。ターゲットとする顧客の年齢、性別等を限定せず、商品の使用方法もユーザーに委ねることで、商品の"white space"や"emptiness"を残し、無限の可能性を提供しているということです。

良品計画の社内でも「無印らしさ」に関する明確な定義が無いため、「商品化すべきか」「売り続けるべきか」が度々議論になるそうです。
例えば店内で必ず目にするアロマディフューザー。この商品は売上は好調、ユーザーの評価も高いらしいのですが、「本当に無印らしさを表現できている商品なのか? 売り続けるべきなのか?」ということが、長年議論されているらしいです。
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  • アロマディフューザーは、本当に日常生活に必要なものなのか? 簡素な生活を促進すべきなのに、生活に複雑さを加えてしまっていないか?
  • アロマディフューザーに使われている超音波技術は、「無印らしさ」にそぐわない過剰なテクノロジーなのではないか?

授業中は「MUJI-ness」の明確な答えは出ませんでしたが、
  • ブランドイメージを固めてしまえば市場が限定され、事業のポテンシャルを自ら狭めてしまうリスクがある
  • 一方で、無印良品のように、ブランドの定義が(敢えて)不明確だと、社内でもブランドの理解が統一されないというトレードオフがある
  • だとしたときに、企業が取るべき適切なブランド戦略とは何なのか?
という問題提起を教授がしたところで、授業は終わりました。


ただHBSの学生の学びはここで終わりません…!
授業が終わっても「MUJI-nessとは何なのか?!」という話題で持ちきりになり、「これから無印良品の店舗に行ってMUJI-nessを確かめよう!」と言い出す生徒が何人も出てきました。
特にアロマディフューザーは注目度は高く、多くの生徒が写真を撮っていました。




実際に店舗で確かめてみると、「やはりアロマディフューザーはMUJI-nessが表現されているから売り続けるべきだ」という声が多数派でした。

一方でレジ横で売られていた「綿あめ」は、「全くMUJI-nessが無いので、これこそ今すぐ販売停止するべきだ!」という声もありました笑

納得いかない事はとことん議論をし、そして現場で見て確かめる。HBSの学生の探求心や行動力が感じ取れる授業でした!

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