リーダーシップ・組織論の授業

ボストンは11月に入ってから寒さが一気に増し、紅葉が楽しめるのもあと1週間くらいかな、という感じです。

今週末は日英バイリンガルのための就職イベント『ボストン・キャリア・フォーラム』があり、ボストンに多くの日本人が集まりました。
僕は就活をする側ではなく、選考をする側として採用チームをサポートさせて頂いたり、同僚と久しぶりにキャッチアップしたりと、楽しく過ごしました!

さて、今日はLeadership and Organizational Behavior (LEAD)という、リーダーシップや組織論に関する授業について紹介します!

LEADは、今学期の授業が5つのモジュールに分かれていて、先週からちょうどモジュール3に入ったところです。

  • Module 1: Leading Teams
    チームの機能・設計・プロセス・カルチャー、チームのマネジメント方法
  • Module 2: Enhancing Interpersonal Effectiveness
    1-on-1コミュニケーション、ネットワーキング、上司・部下・同僚のマネジメント方法
  • Module 3: Leading, Designing, and Aligning Organization
    組織の構築、設計、カルチャー、システム
  • Module 4: Leading Change
    変革の戦略と実行、コミュニケーション方法
  • Module 5: Developing Your Path
    キャリアパスの構築、ワークライフバランス

モジュール3は『組織』の仕組みに焦点が当てられているのですが、先週取りあつかった、ブリッジ・ウォーター・アソシエイツ (Bridgewater Associates)という企業の仕組みが非常にユニークで興味深かったです。
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ブリッジ・ウォーターは、1,200億ドル以上を運用する世界最大のヘッジファンドなのですが、規模が大きいというだけでなく、パフォーマンスも他のヘッジファンドと比べても飛び抜けて良く、金融危機や不況でも常に高い成果を残してきました。
1991年から2011年までの期間では、年間16%のリターンを出してきたとのことです。

何故、こんなにも素晴らしいパフォーマンスを出し続けてこられたのか? ということが注目され、ブリッジ・ウォーターの組織の仕組み、プロセス、人材、企業文化に関してケースが書かれた訳です。

ケースを読んでいる中で衝撃を受けたのは、ブリッジ・ウォーターの徹底した「透明性の担保」の方法です。
  • 社内の会議は全てビデオで録画され、全社員がビデオを閲覧できる
    → 自分のコメントに対して責任を持つことが求められる。また、経営層がどのような考え方で意思決定をしたかを、どの社員でも知ることができる。
  • 改善が必要だと思われることは、指摘しなければならない(義務)
    → パフォーマンスの低い社員に対しては、超直接的なフィードバックを行い改善を促す。
実際の会議のビデオを見たやり取りは、以下のような感じ…。

社員1:「君は全く信用できない男だ。この間 xxを頼んだはずなのに、まだできていないじゃないか。この前も同じようなことがあった。ここまで頼りにならないヤツだとは思わなかったよ。」
社員2:「…。。。 いや、そんなことはない。俺は任された仕事は常に質高くやってきたし、周りからも信頼されているはずだ。。」
社員1:「全く理解していないな。君は何にもできてないじゃないか。誰も君のパフォーマンスに満足していない。まずは、皆の期待を裏切ったことを認めたらどうだ。」
社員2:「…。 そうか。。 今後どうすれば良いか一緒に考えてほしい。」


これ以上に衝撃を受けて、「嘘でしょ…笑」と笑ってしまったのは、ケースで紹介されていた、ある社員からブリッジ・ウォーターの社長 レイ・ダリオ氏 (HBS卒業生)に対する痛烈な批判のメール。

「レイ、あなたの今日の会議でのパフォーマンスの評価は『D マイナス』だ [A, B, C, D, F評価で]。  あなたは50分もの間、どうでもいいことを話し続けた。会議の準備を全くしてこなかったことは明白だ。そうでないと、あそこまで散らかった話をすることは到底不可能だからね。今後同様のことが起こることは許されない。もし私の考えが間違っていると思うのであれば、会議の他の出席者に聞いてみると良い。」

上記の文面に対するレイ・ダリオ氏の返事が以下:
「フィードバックを送ってくれてありがとう。そして、君たちをがっかりさせてしまい申し訳ない。自分は重要なことを話していたつもりだったけれども、間違っていたみたいだね。
この前の別の会議での自分のパフォーマンスはどうだった? A~Fで正直に評価してほしい。」

社員に徹底的な透明性を求める分、レイ・ダリオ氏 自身も耳の痛い批判を甘んじて受け入れています。
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ただ、相当行き過ぎた部分もあり、「陰口を言っていた社員」や「秘密で社内恋愛をしていた社員」を解雇した、という事実もあります…。。

この働き方、企業文化の根底にある目的は「真実(Truth)を見極める」ことにあります。
市場の動きを競合他社よりも深いレベルで理解して投資判断をしていくことで、ブリッジ・ウォーター社は常に高いパフォーマンスを出してきました。

レイ・ダリオ氏の引退後も、この唯一無二の企業文化を維持するために6年ほどかけて書き上げた「Principles」という社訓があるのですが、ある時この文書が社外に漏れ、今ではAmazonでも購入可能になっています。

業績と企業文化の関係性、企業文化を根付かせる方法等を考える上で、とても面白いケースでした!

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