生き甲斐 (Ikigai)という考え方

全ての期末試験が先週終わり、遂に冬休みに入りました!
試験は各教科、4~4.5時間で実施され、 1) ケースの文章を読む2) 与えられた情報を分析する3) 分析結果を基に1,000~1,600 wordsで回答をまとめる、 という3つの作業を時間内に完了する必要があります。

4時間と言うと「かなり長い」という印象ですが、実際に試験を受けてみると、あっという間に時間が無くなり、むしろもう1時間欲しいくらいでした。ほとんどの生徒が、ギリギリまで時間を使い回答を書き上げていました。

質問の内容は科目によって多少の違いはありますが、基本的には「あなたがこのケースの主人公だったら、何をするか?」ということを聞かれます。
この質問に答えるために、以下等の要素について幅広く触れることが求められます。

  • 現状の課題は何か?
  • 課題の真因は何か?
  • 課題を解決するための施策には、どのようなものが考えられるか?
  • その施策の内、どれをどのような優先順位で実行すべきか?(短期 vs. 中長期)
  • その施策の効果を、どのような指標でモニタリングすべきか?
  • 実行した施策が上手くいかなかった場合のプランBはどのようなものが考えられるか?

実際のビジネスの世界でも、経営者は自ら課題を特定し、答えるべき質問を自分で設定する必要があるため、HBSにおける試験問題もあえて生徒一人一人に「何が重要なのか」の判断を委ねているように思います。

HBSでの初の期末試験を受けてみての感触は、…そこそこ難しかったです。。ただ、周りの生徒も同様の反応だったので、あまり心配しないようにします!笑


さて、前回のブログ記事では「生徒が教授をいじる」ことについて触れましたが、それに加え、各学期の最後のクラスでは「教授が生徒へメッセージを送る」ことも伝統となっています。
教授がこれまでの経験を基に含蓄のある言葉を送ってくれるのですが、個人的にはLEAD (リーダーシップの授業)の教授の言葉が特に印象に残りました。

メッセージを送るにあたり、LEADの女性教授は自身のストーリーを共有してくれました。
  • PhDを取るために、HBSで研究をしたかったが面接で落ちてしまい、結局MIT(マサチューセッツ工科大学)で研究をすることになった
  • しかし、自分の専門分野における著名なMITの教授と研究ができ、振り返ってみるとHBSではなくMITで研究できたことが、今の自分の強みに繋がっている
  • また、自分は3人の小さな子供の母親でもあるため、HBSでの教授の職に就くことはワークライフバランスの観点からかなり不安だった
  • しかし、家族からのサポートを得たり、自分のタイムマネジメントの意識を変えたりすることにより、仕事と私生活の両方の質を高く保つことができている
実際にはもっと色々なことを話してくたのですが、エッセンスだけ抽出すると以上のような感じです。そして、このストーリーを基に、教訓を3つ共有してくれました。

教訓1
Before: Decisions are zero-sum
After: Decisions are compatible
もともとは、何かを得るということは、何かを諦めることだと思っていた。つまり、人生の決断はゼロサム・ゲームである、と。
しかし、「母親」と「HBSの教授」という一見、両立できないことも、やり方次第では両立することが可能(compatible)だということを身をもって知った。

教訓2
Before: Big decisions matter
After: Small everyday decisions matter
「HBSで教鞭を執るかどうか」というような大きな決断が、人生において重要だと信じていた。
しかし、「仕事の時間を区切って、家族との時間を確保する」等の日々の小さな決断の方が、家族や自分の幸せに大きく影響をしていることに気づいた。

教訓3
Before: Setbacks set you back
After: Setbacks have your back
「理想の職に就けない」などの失敗・挫折 (setback)は、人生設計を乱し、人生を後退させるものだと感じていた。
しかし、MITで自分の専門領域における著名な教授の指導の下、研究ができたが故に今に繋がっていることを考えると、失敗・挫折は人を支えてくれるもの、助けてくれるものだと捉えるようになった。


教授の話の中でも特に教訓1は、今学期のクラスで「仕事を選ぶ際に、『自分が得意なこと』と『自分が好きなこと』のどちらを優先すべきか」に関して議論したことを思い出し、改めて考えさせられました。

  • 自分のスキルを活かせる仕事こそ、世のためになる(下手の横好きでは、世のためにならない)
  • 自分が情熱を抱ける仕事こそ、人生を豊かにしてくれる(自分が得意だとしても、楽しめない仕事はやるべきでない)

授業中に2つの意見がぶつかり合う中、ある生徒が放った言葉が印象的でした。

「皆、何かを得るには、何かを失わなければいけないという、二者択一で考えているように見える。自分の好きな仕事は、自分の得意なことではないかもしれない。自分の得意なことは、必ずしも自分が情熱を抱ける仕事でないかもしれない。確かに、そういう時もあると思う。ただ、僕は必ずしも二者択一ではないと思っている。 日本の『Ikigai』という考え方を知っているかい? 
Ikigaiは、

・自分が好きなこと (What you LOVE)
・自分が得意なこと (What you are GOOD AT)
・世の中が必要としていること (What the world NEEDS)
・自分が行うことで対価がもらえること (What you can be PAID FOR)

の交点なんだ。 僕はこのIkigaiが感じられる仕事をしたいと思っている。」
Image result for ikigai"

まさかアメリカで「生き甲斐」という言葉を聞くとは思ってもいなかったですが、GoogleでIkigaiと検索すると、上のようなイメージがたくさん出てきます。
この生徒の言葉により、なんだか、はっと気づかされた気持ちになりました。
確かに今まではゼロサムで考えがちでしたが、工夫次第で両立することや、「交点」に辿り着くことも可能なのかもしれないと思います。

2019年もあと少しで終わりですが、「自分が何に生き甲斐を感じるのか」を改めて考え、2020年の目標設定に活かしたいなと思います!

コメント

このブログの人気の投稿

オペレーションの授業

エンロンの元CFOから学ぶ

HBS卒業&ボストンでスタートアップに就職