企業倫理とは何か? (② GPIFによる年金運用戦略)
1週間の春休みが遂に終わり、明日からまた授業が再開します!
コロナウイルスの影響で、明日からはZoomでのバーチャル授業になりますが、どうなるかドキドキです…。
ボストンがあるマサチューセッツ州では3月17日(火)から4月6日(月)までは、全てのレストランとバーを閉鎖され、コロナウイルス蔓延を防ぐ対策が取られています。
日本政府も遂にアメリカからの入国を制限する方針を固めたとのことで、今では日本よりアメリカの方がよっぽど事態は深刻化しています…。。
さて、先日はLeadership & Corporate Accountability (LCA)という企業倫理に関する授業で取り上げた、ジョンソンエンドジョンソン社によるオピオイド鎮痛薬の販売戦略についてブログで紹介しましたが、今回は同じ授業の第二弾と言うことで、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による年金積立金の運用戦略について書きます!
コロナウイルスの影響で、明日からはZoomでのバーチャル授業になりますが、どうなるかドキドキです…。
ボストンがあるマサチューセッツ州では3月17日(火)から4月6日(月)までは、全てのレストランとバーを閉鎖され、コロナウイルス蔓延を防ぐ対策が取られています。
日本政府も遂にアメリカからの入国を制限する方針を固めたとのことで、今では日本よりアメリカの方がよっぽど事態は深刻化しています…。。
さて、先日はLeadership & Corporate Accountability (LCA)という企業倫理に関する授業で取り上げた、ジョンソンエンドジョンソン社によるオピオイド鎮痛薬の販売戦略についてブログで紹介しましたが、今回は同じ授業の第二弾と言うことで、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による年金積立金の運用戦略について書きます!
<② 日本の年金積立金の管理・運用を行うGPIFの運用戦略>
ケースの概要
- 2015年1月、世界最大の年金資産を保有する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の理事 兼 Chief Investment Officerとして水野 弘道氏が就任
- 水野氏は日本企業の環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)への意識を高めて、長期的にサステイナブルな社会を創るために、ESG (Environment, Social, Government)への取り組みを強化している企業に年金資金を投資して運用することを推奨
論点
- GPIFはESG投資をすべきか?
議論内容
ESG投資をすべき派の意見
- ESGに取り組んでいる企業は、そうでない企業と比べて、中長期的な業績が高いというリサーチ結果が出ている。年金資金の運用期間は足が長いため、GPIFは短期のリターンを追うのではなく、ESG投資のような長期投資をすべき
- GPIFのような世界最大規模の年金資金を持つ組織がESG投資をすることで、企業や国民のESGに対する注目が集まり、ESGの取り組みが日本で活性化することが期待される
- GPIFは運用額が膨大であるため、年金基金のわずかな割合をESGに充てるだけでもインパクトが残せ、年金資金の全体をリスクにさらすことなくESG投資が可能
- 国民は必ずしも「何が重要か」「何が正しいか」を正確に判断をしないこともあるため、政府や公的機関が先導すべき
(例えば「増税」に対して、多くの国民は強く反発するが、政府主導で実施することにより、社会保障を長期的に維持できるように導く、等)
- GPIFは年金資金を安定的に運用してリターンを上げることが役割であるため、本来の役割に集中すべき。企業にESGへの取り組みを促すことは、GPIFの役割を超えている
- ESG投資により安定的にリターンを得られるかが不透明な中で、投資方針を変更することは、資金をリスクにさらすことになる
- 年金資金の運用方法を変えるのであれば、国民の承認が必要。民間の資産運用会社が顧客から預かった資金の運用方針を勝手に大幅変更することが無いのと同様に、GPIFも国民から預かった資金をの運用方針を勝手に変更することは許されない
- GPIFがESG投資を始めたとしても、民間企業はGPIFが重視する特定のESG指標を表面上だけ良く見せてGPIFからのお墨付きを得ようとする可能性もある。したがって、日本で真のESGへの取り組みを促進する施策にはならないのではないか
最終的な決断
このケースの主人公として書かれている、GPIFの理事 兼 Chief Investment Officerの水野 弘道氏がHBSに来て下さり、自身がどのような決断をしたのかについて授業の最後に語ってくださりました!(もちろん英語で)
HBSではこのように、ケースの主人公が授業のラスト15分に登場し、ケースで描かれている当時の状況や、主人公が下した決断の結果などについて直接共有して下さることがよくあります。先学期はVodafoneの前CEOのVittorio Colao氏や、スイスの時計メーカーのタグホイヤーやウブロなどプレジデントを務めたJean-Claude Biver氏なども来て下さりました。
同じ内容の授業が複数のクラスルームで同時進行しているため、物理的に登壇できるのは一つのセクションの授業ですが、この画像の通り他のセクションにはスクリーンを通してブロードキャストされます。
以下は水野氏が授業の最後に語って下さった内容で、特に印象的だった点です。
- GPIFは結局、ESG投資をすることを決断した。多くの投資家は短期のリターンを追い求める傾向があるが、長期的に持続可能な社会を創るためには、GPIFがESG投資を主導する必要があった
- 水野氏の掲げるESG投資は、GPIF内からも強い反発があった。反対意見を持つ人も「"長期的"に"良いリターン"を得る」ことが重要であるということに異論はなかったが、"長期的"と"良いリターン"の定義がバラバラであったため、言葉の定義を揃えることがESG投資の合意を得る上で重要だった
("長期"の定義は人により3年から100年の間で大きな差があり、"良いリターン"についても損をしなければ良い(ポジティブリターン)という人もいれば、市場平均を上回るパフォーマンスを求める人もいた) - 投資方針の変更について懐疑的な人も多かったが、「何かを変える」ことは往々にして「現状維持」よりも批判される傾向にある。但し、「変化に繋がるアクションを誰も起こしていない = 現状維持で良い」と言うことではないため、批判を顧みずに変化を起こしていくことが重要である
日経の記事によると、2017年度から始まったGPIFによるESG投資は、2018年度に3兆5千億円に達して2017年度の2.3倍に増え、GPIF全体としての運用益も2兆4千億円の黒字を達成したのことです。
今回のケースを受け、誰か1人の強い信念が一国の未来に非常に大きな影響を及ぼし得ることを改めて気付かされました。
また、同じセクションの友人から以下のようなメールも個人的に貰い、日本人としても誇らしい気持ちになりました。
"I can’t tell you how much admiration I have for this guy - Hiromichi Mizuno. He brought hope for me. I would be very proud as a fellow Japanese to this guy."
さて、明日からは授業が再開するので、引き続きたくさん吸収して学んでいきます!
ボストンは今日も最低気温がマイナス2℃まで下がり、明日も雪の予報で、まだ春と呼ぶには寒いです…。ボストンにも早く春が訪れますように…。
(HBSの横を流れるチャールズ川の夕焼け)
コメント
コメントを投稿