HBS1年目の振り返り

前回のブログ投稿から約2カ月経ってしまいました…!
HBSの1年目の授業は5月始めに終わり、5/8(金)に最後の期末試験を完了して夏休みに入りました!

試験時間は各教科5時間与えられ、ケースを読む→試験問題に基づいて分析をする→回答をWordで書く→回答を学校指定のウェブサイトにアップロードする、といった流れです。

文字制限は各科目、大体1,500 words程度で、それに加えて分析したグラフや表などを数個添付します。

例年であればクラスルームで試験を受けるのですが、今年はコロナウイルスの影響で3月後半から全ての授業がオンラインに移行したため、試験も自宅で受ける形式でした。先学期同様に5時間の試験時間をフルで使って回答を書き上げ、何とかなったかとは思います笑

試験も終わり落ち着いたので、家の整理も兼ねてこの1年で読んだケースを積み上げてみると結構な量になりました。300弱のケースを読んだので、約300の会社の課題について解決策を考え、意思決定の疑似体験を繰り返してきました。

HBSでの1年目を振り返ると数え切れないほどの学びと思い出がありますが、自分の中での気付きを数点書き留めておきます。(ファイナンスや会計等の知識/ハードスキルの学びはもちろん沢山あったのですが、今回は敢えてソフト面の学びを記します)

<1. Pathos>
HBSでは生徒同士が議論をしながら学び合うという、独特の授業のスタイルを取っており、「発言の質」がお互いの「学びの質」に直結しています。そのため、授業中に意見を述べる際はそれなりの緊張感があります。
これまでのキャリアで驚くような実績を残してきた生徒と議論をし合うので、プレッシャーは尚更です。

HBS入学当初は、このような緊張感の中で「自分の考えを効果的に伝える能力を鍛えたい」と期待していました。このブログの最初の記事にも書きましたが、ある卒業生に「HBSにおける一番の学びは何だったか?」と質問したところ、彼女は「伝える能力、を身につけたことだ」と答えていました。「どんなに素晴らしいアイデアを持っていたとしても、自分一人でできることは限られているので、それを周りに上手く伝えて人を動かしていかなければ、世の中は何も変わらない。ケース・メソッドを通じて『伝える能力』を身につけたことが、HBSでの一番の財産だ」、と。

僕は新卒からコンサルティング業界で働いてきたこともあり、論理的に物事を考えることはある程度鍛えられてきたと思います。また、自分で言うのもなんですが、相手に緊張感を与えない見た目のためか、人を自然と安心させ周りから信頼してもらってきたのではないかとも思っています。仕事をしている際にクライアントから、「他の人には言えないけど、あなただから話す」と、胸の内を明かして頂いたこともありました。

古代ギリシャ哲学者のアリストテレスが言う「説得力の構成要素」のうち、ロゴス(論理)エトス(信頼)は、あまり意識せずとも使ってきたかと思います。

一方でパトス(共感・感情)はあまり使いこなせておらず、情熱、熱意、感動などを生みながら伝えることが如何に重要かと言うことをHBSの授業を通じて身をもって体験しました。

ケースの主人公として描かれているビジネス・リーダーが目をキラキラさせながら将来のビジョンについて語っている姿。セクションメイトが感情むき出しで、反対意見を熱く述べている姿。教授が教室を縦横無尽に駆け巡りながら、身振り手振りを交えて教えている姿。
いずれも心を動かされ、強く印象に残っています。

僕は冷静沈着で多少のことではうろたえず、周りからも「クールだよね」とよく言われてきました。その性格を自分の強みとしても活かしつつも、ロゴスエゴスだけに頼らず、よりパトスも取り入れたコミュニケーションをしていくことが自分の大きな目標になりました。

特に近年、ポピュリズムの台頭にも見られる通り、良くも悪くも「感情」が多くの人々を突き動かしています。人種差別に対する暴動、厳格化する移民政策、貿易摩擦、環境保護の取り組みの後退、コロナウイルスへの対応等。
様々な人種、宗教、所得水準、コミュニティに属する人々が、どのような感情を抱いているかをリアルに想像し、色々な立場から多角的に物事を捉えることが、共感を生み、人々を動かす上で必要不可欠であると、この1年を通じて実感しました。

特にHBSは比較的裕福な家庭でリベラルな思想の下で育ってきた人が多いため、発展途上国に暮らす人々の生活はおろか、国内でトランプ政権を支持している層の感情を理解することさえできていない面もあります。
HBSのミッションに”We educate leaders who make a difference in the world."とあるように、世の中を変えていくためには、論理的に正しいだけでは不十分で、如何に感動を生み出すか・共感を得るか、が肝要です。

春学期の授業で、ミャンマーのロヒンギャ難民問題を議論していた際に、教授が言った一言が印象的でした。
Engaging in the "big questions" without once moving the heart is dangerous and futile.
(心を動かさないまま、"大きな問題"について議論・検討をすることは危険であり、無駄である。)

人々が置かれている状況を無視した政治家の的外れな政策や、需要の無い商品・サービスの開発等。想像力や共感力の欠如により、効果の低い施策を実行している例は枚挙にいとまがないです。
HBSでの残りの1年は、この気づきも踏まえたうえで、自分の「伝える能力」や想像力・共感力に磨きをかけたいです。


<2. Give>
よくギブ・アンド・テイクという言葉を耳にしますが、HBSでは気前良く"Give"している人に多く出会いました。
特に面白かったのが、入学して間もないオリエンテーション中に行った「Reciprocity Ring」と呼ばれるイベント。Reciprocityとは”相互関係”という意味で、手助けしてほしい事をお互いに共有することで、そのニーズを相互に満たすことを目指します。


まず自分のニーズと名前を付箋に書き、そのニーズをグループの前で発表したうえでホワイトボードに円形に貼っていきます。どのようなニーズでも良く、キャリアに関する真面目な相談から、カジュアルな依頼まで様々です。
  • HBS卒業後はクリーンエナジーで起業をしたいので、クリーンエナジー業界のスタートアップ企業で働いている人を紹介してほしい
  • 今、ビジネスを立ち上げている最中なので、事業計画についてフィードバックが欲しい
  • アメリカの政治についてより深く理解がしたいので解説してほしい
  • ボストンでおススメのレストランを紹介してほしい
グループ全員の発表が終わったところで、自分がどのメンバーのニーズを満たすことができそうかを共有し、支援を提供する人と、支援を受ける人の付箋を線で繋げると、ニッチな要求も含めて全てのニーズが何らかの形で満たされ、網の目のように線が交差しました。

ここでの気づきは、「助けを求めれば、見返りを求めずに助けてくれる人は沢山いる」、そして、「自分のニーズを周りに共有しなければ、誰もそれに気づかない」ということ。

このReciprocity Ringは入学オリエンテーション以降も続き、様々な形でセクション内のニーズや悩みが解決され続けてきました。
また、周りから求められずとも、自ら率先してGiveをする人の多さにも驚かされました。
  • セクション全体(94名)の旅行や、ソーシャルイベントを企画する
  • 自分の人生に大きな影響を及ぼした出来事とそこから得た学びについて、"My Take"と呼ばれるスピーチイベントでセクションの仲間と共有する
  • セクションメイトのクラスでの発言について率直にフィードバックをする
  • 授業で習ったコンセプトについて、自分の専門知識を活かして勉強会を開く
  • コロナウイルスの影響で運動ができない友人のために、Zoomでのオンラインエクササイズをリードする
このようなGiveがお互いを支え合い、コミュニティの絆を強固にしたと思います。
僕も自分の趣味であるカメラを使って、就活向けの顔写真をセクションメイトのために撮ってあげたり、ソーシャルイベントで写真を撮って友人に共有したりなどもしました。
また、最近はHBSでの1年間の思い出をまとめた動画を作成したところ、セクションメイトにも非常に感謝され、「死ぬまで毎日1回は見続ける」と喜んでくれた友人もいました。

コロナウイルスの影響で実現はできていませんが、約170名のHBSの学生を連れて日本各地を回るJapan Trekの企画をリードしたり、MBA受験やコンサルティング業界について興味を持っている友人の相談に乗ったり等ということもしてきました。

このような活動を通じて、交友関係が広がったり、自分のリーダーシップも伸ばせたかと思う一方で、時間と心の余裕が無い時はGiveに手が回らなくなることも多々ありました。

Giveを通じてコミュニティに還元しつつ、自分の幅を広げるためには、タイムマネジメント効率割り切りが重要だなあ、と強く思うようになりました。
まず、何にどのくらいの時間がかかりそうかが見積もれなければ、Giveに充てる時間があるか否かが分からない。そして、限られた時間の中で色々なことに挑戦するには、今まで以上に効率的に物事を進め、プラスアルファの活動のための時間を捻出しなければならない。もう少し時間があればxxxの完成度を高められるのに、、と考えだすとキリがないし、睡眠時間を削ってしまう傾向にあるので、ある程度は「このくらいで良いか」と割り切ってしまう。

これらを念頭に、夏休みやHBS2年目も過ごしたいと思います!

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