HBSの徹底したコロナ対策

現時点のアメリカにおけるコロナ感染者数は約680万人、死亡者数は20万人を超えています。日本の感染者数は約8万人、死亡者数は約1,500人ということを考えると、米国の感染状況は日本の100倍悪いと言えます。
アメリカの総人口が日本の約3倍ということを考慮しても、状況の差は歴然です。

そのような中、ハーバードでは感染拡大を防止するためにかなり徹底した策を取っており、それが功を奏してハーバードコミュニティ内のコロナ感染数は低く抑えられています。

具体的には以下等の対策を講じています。

I. 毎日の感染リスク評価
II. 週2回のPCRテスト
III. キャンパス内での人数制限
IV. コロナ感染状況を可視化したダッシュボード


<I. 毎日の感染リスク評価>
質問1. 次のいずれかの症状がありますか? (熱、寒気、咳、呼吸のしずらさ、頭痛、…等)
質問2. 過去14日間に、COVID-19の検査で陽性反応を示した人と6フィート (1.8メートル)以内に近づきましたか?
質問3. 過去14日間に、あなたはCOVID-19の検査で陽性でしたか?




上記の回答が全て「No」であればHBSキャンパスの施設使用時に必要な入場パスがスマホで発行されます
一方で、一つでも「Yes」がある場合入場パスが発行されないためHBSキャンパスには来てはならず、自宅隔離をしなければなりません。

毎日各自がスマホで3つの質問に答えるだけなので、どこまで信頼できるかは分かりませんが、虚偽の回答をすることのモラルの問題、そして学校側の厳しい対応(生徒への処罰の可能性)などを踏まえると、恐らく大多数の生徒が正直に回答しているのではないかと感じています。


<II. 週2回のPCRテスト>
HBSのキャンパスで少しでも時間を過ごす教授、スタッフ、生徒は全員、週2回PCR検査を受けることが求められています。

膨大な数のPCR検査を無理なく回すために、HBSでは何と自分で鼻に綿棒を入れて粘膜のサンプルを採取して提出する、というセルフ検査を採用しています。
このセルフ検査のサービスは、「color」と呼ばれる民間企業が提供しているもので、今回の感染拡大を受けてハーバードがcolorの検査キットを大量に購入する契約を結んだようです。


上の写真のようなパッケージが毎週2つ配布され、その中にはサンプル採取用の綿棒採取後の綿棒を入れる容器取り扱い説明書の3点が入っています。

このパッケージにはそれぞれID番号が振られており、そのID番号を使ってウェブ上で検査キットをアクティベートすることで、各生徒と検査キットの紐づけがされるようになっています。


検査キットをアクティベートするには、まずは自分の名前、生年月日、コンタクト情報などを入力します。(2回目以降は自分のアカウントにログインすれば、情報が自動入力されます)



そして次の画面で、検査キットに振られているBarcodeとAccount Numberという2種類のID番号を入れると、検査キットが有効になります。

その後に、自分の鼻に綿棒を入れてサンプルを採取し容器に入れたうえで、キャンパス内の指定の場所に提出します。

すると半日~1日以内に検査結果を知らせるメールが届きます

以前インフルエンザに罹った時に病院で鼻に綿棒を奥まで入れられて相当痛い思いをしたので、PCR検査が週2回行われると聞いた時はゾッとしましたが、HBSのPCR検査は自分でできるため痛みは全く感じません


医師や看護師ではなく、自分でサンプルを採取する検査が果たして本当に正確なのかが気になるところですが、綿棒があまりにも浅くしか入っておらず十分なサンプルが得られないと検査結果でエラーが出るようなので、精度はある程度確保されていそうです。

日本ではPCR検査を受けること自体にハードルがあるようですが、検査を受けたいときに受けられる環境をつくらないと(もしくはワクチンができないと)、なかなか経済活動を再開するのは難しい気がします。


<III. キャンパス内での人数制限>

学校が認識している組織(クラブやセクションなど)が主体となって企画する学校公式イベントは、屋内は25人、屋外は50人までに制限されています。
また学校ではなく、生徒主体で企画をするインフォーマルな集まりは、屋外・屋内問わず10人が上限になっています。

もちろんこの人数制限下でも、マスク着用とソーシャルディスタンスの確保は求められていて、ハイブリッドクラスもこの条件を守ったうえで実施されています。下の写真からも分かるように、教室では25人を上限に生徒が間隔をあけて座り、教授の目の前のモニタには教室には入れない生徒がZoomから参加しています。
また教室の後方にも巨大なモニタがあり、Zoomで参加している生徒が大きく表示されています。


何回かハイブリッド授業を教室で受けましたが、クラスの活気が直接的に伝わってくるので、やはりZoomより教室の方がよっぽど良いなあ…、としみじみ感じてしまいます。


<IV. コロナ感染状況を可視化したダッシュボード>
ハーバードの生徒、教授、スタッフのコロナ感染数がウェブ上で日々アップデートされ、状況が一目で確認できるようになっています。
https://www.harvard.edu/coronavirus/harvard-university-wide-covid-19-testing-dashboard

これによると、直近の7日間でコロナ陽性は6人とのことです。
その6人とも学部生か教授・スタッフなので、HBSを含むハーバードの大学院生の感染は過去1週間ではありません。





コロナ陽性率はハーバード全体で0.04%、マサチューセッツ州で0.80%、ボストンで0.75%なので、ハーバードでの陽性率は低く抑えられていることが分かります。
ただハーバードではコロナ陰性でも教授・スタッフ・生徒が繰り返し検査を受け続けるので、その分、陽性率が低くなるのは当たり前のことではありますが…。

東京の陽性率は現時点で3.7%程度ですが、アメリカほど大規模にPCR検査をできておらず、コロナ感染のリスクが疑われる人を中心に検査を実施していると思うので、日本がアメリカよりも陽性率が高いことも納得です。


アメリカではここまで徹底してコロナの感染を必死に食い止めようとしている学校や地域がある一方で、マスク着用を拒否したり、大規模なイベントが行われたりと、全く逆方向に走ってしまっている州や都市も多くあります。そのような地域のほとんどが共和党・トランプ政権を支持しているエリアです。

アメリカ国内における「分断」はトランプ政権発足以降より鮮明になりましたが、コロナの拡大はその分断を更に加速させてしまっています。

アメリカ大統領選まで1カ月半。これを機に、コロナの潮目が変わるかも注目です。

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